次の日は快晴だった。昼から雲が出るので早朝のうちから登るとよ
い。と宿の主人に言われる。荷物は宿に残していよいよゴーキョピ
ークに登る。
さすが標高5000メートルを超えると、
一歩登るごとに胸が苦しい。
ほとんど45度の坂だ。心臓の鼓動と相談して、地球を円形に
見渡しながら、そのピークに登っていく。
そのピークは宇宙に近い。
地上とあまりにも離れているため不安になる。
体が壊れそう。
一歩一歩ごと慣らしながら新しい体験をしていくしかない。
一気に登りたかったが、
妻が、頭が痛くて呼吸も苦しくて倒れそう。というので、
坂の中腹で少し休む。何とか残りの坂を登り終えると、
ごつごつした岩の上をチョルテン(チベットの色とりどりの旗)が
おめでとうというように張り巡らされていた。
雲が早く流れる。
360度見渡せるゴーキョピークに着いたのだ。
ヒマラヤ連山、エベレストも見える。下には氷河も。
下界はここからはるか前方で下方。
まったく想像をできない隔たりがある。
雲の上と下の世界のようだ。
眺めを満喫するも束の間、10分くらいすると雲が出てきた。
雲は瞬く間に風景を遮断し、
あっというまに我々も雲に包まれてしまった。
ほとんど視界ゼロ。ギリギリセーフだったのだと気付いた。
帰りはこんなに簡単だったのかと思うほど、単純な道だった。
少し下がるだけで頭痛からも解放されるような気がした。
宿に戻ると一人、シェルパが待っていた。
「お前はラマの子分じゃないのか、残ってくれるか」というと、
よくわからない英語で、実直そうに、「大丈夫」という。
氷河を渡って、チョーラの峠越えを案内してくれるという。
あのヤク(ヒマラヤに生息する牛)も登れないといわれる難所である。。
この時点ではチョーラ峠越えについて、
まだ二人とも現実にはどういうことなのか
わかっていなかったのであった。
氷河の上を歩くとは、考えただけでもわくわくした。
明日の昼には氷河を超えようと約束したが、
雪次第では越えられないかもしれないという。
不安になりながらもひとまずは眠りについた。