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2013.08.08

簡単ではない!ヒマラヤの旅 その2

暗闇の中、雨がしとしと降ってきた。
雨水に足元を濡らしながら急な坂の岩の道を登っていくと、
明かりが見えてきた。
あれが最後の宿場町、ナムチェバザールだ。
ここは標高3000メートル以上あり、エベレスト登山の起点となる。
これより上は、ただの山小屋しかない。

夜も遅く、暗闇に家が立ち並ぶ。
ゾウが体当たりしても壊れないほど頑丈な扉を閉めて、
皆静まり返っている。
どこかまだ開いている宿はないか、道の端まで行ってみたら一軒明かりが見える。

ドンドンと叩いてハローハローと英語で叫ぶ。
重い扉が開いてろうそくを付けて出てきたのは
皺だらけの大柄なおばあさんであった。
魔女のような皺だらけで歯のない顔、ぎょろっとした目。
「今晩泊めてくれ」と身振り手振りで言い、中に入ってやっとひと心地。
階下の部屋に通され、そのまま眠った。

次の朝、朝食を頼んだ。
ここはホテルのようだが、泊り客は誰もいない。
建物と言えば、急な斜面の岩の上に建って、
後ろに行くほど斜めに下がっていて、
地下3階まで清水の舞台のように丈夫な木組みでできていて、部屋は多い。
不思議な造りであった。

おばあさんは、英語を話し、
家族でこのホテルを経営しているが、お客は来なくて、
大家に毎月膨大な家賃を払わなければならないのだといった。
ネパールの相場を考えると、その金額に私は気が遠くなりそうであった。
(後から知ったのだが、後ろが低く坂になっている建物は
妻に言わせると風水的には最悪らしい)

さあトレッキングだ。と思ったが、問題があった。
パーミットはないのである。
正規ルートからは、数回、関所を通らねばならず、
そのことを宿屋のおばあさんに相談すると、
「待ってて頂戴、何とかするから」と、2人の男を紹介してくれた。

ひとりは20代の青年で、名前を、何とかラマといった。
(以後、ラマと呼ぶことにする)
この男がガイドを務めるという。
もう一人は年配に見えたが
実は若いのかもしれないがっちりしたシェルパであった。
この2人を雇うことにした。
正規ルートではない抜け道をよく知っているということであった。
相場よりやや高く交渉し、前金を払うと、
さあ明日はいよいよエベレストに向かって出発だ。
心がはずんだ。

次の日は晴天で、我々4人はどんどん坂を上って行った。
山の尾根伝いに歩くと、下のほうに正規ルートが見える。
関所が何か所もあり、人がたくさんひたすらに登っていた。
我々は、何千メートルも下の川や山々を眺めながら
楽しい「天上の道」を登っていた。

山の上にも小さな家があり、夕方近くになったので、
我々はその家の庭にテントを張らせてもらうことになった。
空を見ると、月がきれいに見える。
月の模様まではっきり見えた。
顔が宇宙に入るような美しさだった。

突然ラマが叫んだ。「あっテントがない!ナムチェバザールに忘れてきた。」
(つづく)